日本酒(清酒)は、①米、米麹、水を原料として発酵させ、漉したもの、②米、米麹、水および清酒粕、その他政令で定める物品を原料として発酵させ、漉したもの、③清酒に清酒粕を加えて漉したものと定義されている。③の清酒はそもそも①、②で発酵させ漉したものになるため、日本酒(清酒)は、発酵させてうえで、「漉す」ということが必要となる。
焼酎は、所定の原料をアルコール発酵させ蒸留した酒で、連続式蒸留機の場合はアルコール分36度未満、単式蒸留機の場合はアルコール分45度以下で、ウィスキー、ウォッカ、ラム、ジンなどのに該当しないもの。
日本酒
日本酒の特性
日本酒には、冷酒、常温、燗酒の飲み方があり、飲用温度は6℃~60℃と幅広い。
米の収穫が秋のため、晩秋から冬の間に仕込むと、初冬から早春に新酒が誕生する。特に新酒をひと夏熟成させたものを「ひやおろし」と呼ぶ。一般に、穏やかな香り、滑らかな口当たり、とろみのある濃密な味わいが魅力である。
日本酒は、複雑な醸造工程を経るため、杜氏をはじめ蔵人の技術力に酒質が大きく左右される。また、原料となる米の品種、水、土壌、気候などの違いにも影響を受ける。
醸造工程
工程 | 概要 |
---|---|
浸漬(しんし) | 原料米に水分を吸わせる作業。 |
蒸きょう(じょうきょう) | 原料米を蒸すこと。 |
麹(こうじ) | 蒸した米(麹米)に麹菌(麹カビ)を繁殖させる。 |
酒母(しゅぼ)、酛(もと) | 麹に水、酵母、乳酸菌を加えたもの。 一般的には、2週間から1か月で酒母が完成。 |
醪(もろみ) | 酒母に、麹、蒸米、水を加えて発酵させる。 通常4日間で3回に分けて行われ、「三段仕込み」と呼ぶ。 |
発酵(並行複発酵) | でんぷん質の麹菌による糖化と、酵母によるアルコール発酵 が同時並行的に行われる。 |
上槽(じょうそう) | 発酵を終えた醪を搾ること。 (酒税法上の「漉す」に該当) |
ろ過 | ろ過を行わない場合もある。 |
火入れ | 60℃~65℃程度で一定時間、酒を加熱することにより、残存 酵素の働きを止め、殺菌して、酒質の安定化させる。 |
割水 | 加水。 |
※三段仕込み・・・3回に分けて行うが、それぞれ「初添(はつぞえ)」「仲添(なかぞえ)」「留添(とめぞえ)」と呼ばれる。初添と仲添の間には、「踊り」(なにもせず、酵母の増殖を待つ日)が1日あり、合計4日。四段仕込み、五段仕込みなども行われることがある。
※生酒(なまざけ)・・・一度も火入れしない場合。
※原酒、生原酒・・・割水を行わない
並行複発酵
酒類を造るときは、通常、酵母が、糖分をエネルギーにしてアルコールと炭酸ガスを生み出す。(この酵母の働きがアルコール発酵)。
ワインの場合、原料のブドウに糖分が多く含まれているため、酵母の働きだけで酒類を醸造する(これが「単発酵」)。
ビールの場合、原料となる穀類がでんぷんを含む原料であり、この原料に含まれるでんぷんを糖化する工程があり、そのあと酵母を加えて、アルコール発酵させることになる(これが単行複発酵。糖化の工程のあと、アルコール発酵が行われる)。
日本酒の場合、米に含まれるでんぷんを麹菌を使って糖化し、酵母を使ってアルコール発酵させるが、この工程を同時に進める。これが「並行複発酵」である。
酒母
酛(もと)とも呼ぶ。
酒母は、麹、水、酵母、乳酸菌で構成されるが、乳酸菌をどう得るかによって、「生酛系酒母」と「速醸系酒母」に分けられる。
分類 | 概要 |
---|---|
生酛系酒母 | 生酛、山廃酛。 自然の乳酸菌を取り込む。 4週間ほどかかる。 |
速醸系酒母 | 醸造用乳酸を添加。 2週間程度で完成。 |
酵母
日本酒の醪の発酵温度は、6℃~16℃と低温であり、低温化で発酵に強い清酒酵母を使用する。
- きょうかい6号(新政)
- きょうかい7号(真澄)
- きょうかい9号(熊本、または香露)
- きょうかい10号(明利小川)
- きょうかい14号(金沢)
原料米
日本酒は、主食用であるうるち米を使用する。
日本酒造りに適した性質をもつ米を「酒造好適米」あるいは「酒米」と呼ぶ。
代表的な酒米 | 概要 |
---|---|
山田錦 | 晩生(おくて)品種 1923年兵庫県の試験場にて生み出された。 山田錦が母、短稈渡船(たんかんわたりぶね)が父 酒米の第一位 |
五百万石 | 早生品種 1938年新潟県の試験場で生み出された 酒米の第二位 |
美山錦 | 1978年命名 長野県の試験場で生み出された 酒米の第三位 |
雄町 | 晩生品種 岡山県で発見 混血のない品種 |
水
日本酒の原料の80%を占めるのが水。
酒税用水には、「仕込み水」「割水」「洗米水」「浸漬の水」などさまざま必要とされる。
醸造用には、無色透明でphは中性、または微アルカリ性が望ましい。
カルシウム、マグネシウムの含有量を多い水を硬水、少ない水を軟水という。日本酒では、どのような水を使うかによって、酒質が変わる。
製法品質表示
原料や製造方法の違いにより8分類されている(特定名称)。
精米歩合 | 米、麹、醸造アルコール | 米、麹 |
---|---|---|
ー | ー | 純米酒 |
70%以下 | 本醸造酒 | ー |
60%以下 または特別な製造方法 | 特別本醸造酒 | 特別純米酒 |
60%以下 | 吟醸酒 | 純米吟醸酒 |
50%以下 | 大吟醸酒 | 純米大吟醸酒 |
※麹米の使用割合は、15%以上でなければならない
※吟醸造り・・吟味して醸造することをいい(そのままかいっ!)、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、麹の割合を高くして、特有の芳香(吟香)を有するように醸造すること。
地理的表示(GI)
名称 | 産地 | 指定年 |
---|---|---|
白山 | 石川県白山市 | 2005 |
日本酒 | 日本 | 2015 |
山形 | 山形県 | 2016 |
灘五郷 | 兵庫県神戸市灘区など | 2018 |
はりま | 兵庫県複数市町村 | 2020 |
焼酎
種類(焼酎)
2006年までの規定は、甲類、乙類という表現が使われていたが、それぞれ現在は連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎と呼ぶ。
- 連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)
- 単式蒸留焼酎(焼酎乙類)
※本格焼酎は、単式蒸留焼酎のうち、指定の原料と麹を使用し、水以外の添加物を加えないものをいう。
常圧蒸留と減圧蒸留(焼酎)
外気と変わらない圧力で蒸留するのが「常圧蒸留」、蒸留機内の圧力を下げて蒸留するのが「減圧蒸留」。
沸点の違いを利用してアルコール分を分類するのが蒸留であるが、減圧することにより沸点が下がることを利用するのが減圧蒸留。
地理的表示(GI、焼酎)
名称 | 産地 | 特徴 | 指定年 |
---|---|---|---|
壱岐 | 壱岐島など | 麦焼酎(大麦) 単式蒸留 | 1995 |
球磨 | 熊本県人吉盆地 | 米焼酎 | 1995 |
琉球 | 沖縄県 | 米焼酎 タイ米、黒麹菌を使用 | 1995 |
薩摩 | 鹿児島 | サツマイモ焼酎 | 2005 |